「錦繍」宮本輝(著)を読みました
だいたいにして小説というものが嫌いです。いや、嫌いでしたから、小説を読むのはとても久しぶりのこと。
最後に読んだのは「羊たちの沈黙」。
1991年に映画が公開されるのに先立って読みました。そして小説に比して映画の内容のなんと薄いことか!とおおいに落胆したことを記憶しています。
別にだからと言って、それが小説嫌いになった理由ではありません。多分、世の中にあまりに小説が多くて、どれを読んだら良いのか考えるのが面倒くさくなっただけのことだと思います。それに比べたらビジネス書などの類は、読む目的がはっきりしているので、本選びにも迷いがありません。それでもたいして読まないけど。。本好きでありたいと望んできたけど、実はそうではなかっただけのことなのかもね。。
そんな自分がなぜ、宮本輝さんの「錦繍」を突然読むことに生ったのかといえば、それはFacebookでフォローしている方のタイムラインで読後感を目にしたから。
つくづくSNSは行動に影響を与えるものだと、身を持って実感した次第。
宮本輝さんの書いた本など読んだことはなく、氏の小説「青が散る」が原作となったテレビドラマ「青が散る」を思春期に夢中になって見たことを覚えているだけ。
若者の不純が渦巻いていつも股間がパンパンになっているような感じが当時の私には刺激的で、夢中になった覚えがあります。そんな内容ではないのかもしれないけど、私にはそうとしか思えなかった。石黒賢、二谷友里恵。自分の中では忘れられぬ名作。今、見たらきっと途中で寝る。
やっと「錦繍」のお話になるわけですが…
読み終えた時に私に起こった症状といえば、
なぜか涙が止まらない。何も考えられない。
「錦繍」は2人の男女の手紙のやりとりだけで描かれます。どちらかと言えば幸せではない男女2人です。それでも以前は幸福であったし、それを続けることも可能だったかもしれない。
それは本当に終わらせるべきだったのか?形を変えて続けることができたのではないのか?
手紙はやりとりを繰り返すうちに、お互いへの憎悪や愛情や、そんなものが混濁しつつさらけ出されていって、なんともエロチックです。ああ、宮本輝氏の書く本はエロチックなんだ!「青が散る」で若者が見せた青いエロス。「錦繍」では少し年齢を重ねて、現実的で過酷な現実を抱えて、濁った色のエロス。エロスの応酬。読み進めている途中に幾度かの勃起を体験しました。
それでも読み終えた時には、涙が流れているし、思考は止まっているし、それでいて幸福感もあるし、と。
小説の感想は、何か書こうとするとネタバレになってしまって難しいですね。しかし宮本輝さんって変態だなあ、と感心します。しまくります。グッとうちに秘めるものと、全裸で手を広げてバンジージャンプしちゃうようなさらけ出しとのバランスの妙が、グイグイとこちらの胸をえぐってきます。
登場人物の持つ傷が、少しでも自分とリンクしてしまうと、この小説はかなりヤバイです。私と同じように読み終えた時に鼻水垂らしていることでしょう。
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